2009年11月08日

『武士道シックスティーン』 誉田哲也

4163261605武士道シックスティーン
文藝春秋 2007-07

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時々書評で見かけていたシリーズ。最近アフタヌーン誌でマンガ化されていることもあり、気になって読んでみました。誉田さんは以前『ストロベリーナイト』を読んだのですが、そのときの感想としては「ベタ」。類型的ともいえるストーリーで、それほど印象に残らなかった記憶があります。
が、本作は意外なほどよかった。その「ベタ」さが、直球の青春ものとして、いい方向に働いていました。好きだわ、これ。

さて、武藏の『五輪書』を愛読し、剣道一筋、我が剣の道を行く、主人公磯山香織。全中二位の成績を誇る彼女は、決勝でも判定の不備のせいで負けたと信じている不遜な少女だが、彼女がたまたま中3の時に出場した市民大会で、本人的に謎の一本負けをしてしまった。
高校に進学した磯山は、高校の剣道部で、彼女に勝った相手、西荻早苗と再会する。初心者に毛の生えたような、ふわふわした西荻に負けたという事実に、内心のたうち回る磯山。磯山の強烈な勝負へのこだわりに圧倒されつつも、彼女を受け入れていく西荻。2人の少女の成長と、剣道を通じての友情を描いた物語。

西荻、なんて人の好いやつなんだ、と思います。と、いうか、磯山以外のみんな、心が広過ぎでした。メインは高校での女の子の友情ですが、中学時代の磯山のパシリをしていた強者の清水君とか。あれきりなのはもったいないような気もしました。続きも読んでみよう。
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2009年11月06日

『禁断のパンダ』

4796661948禁断のパンダ
宝島社 2008-01-11

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宝島社より「このミス」大賞シリーズなるレーベルで発行されていた本作。一昨年の同賞受賞作『チームバチスタの栄光』が大当たりだったので、これもどんなものかと読んでみたのですが。うーん、ああいうヒットはめったにないものなのですね。改めて、既刊分の受賞作一覧を見直してみると、なにげに、つまんなくて中途挫折してしまった某作品とかもそこにあったりしました。ちょっと、はやまったかも。

グルメ・ミステリーとの触れ込みなので、確かに料理は美味しそうでしたが、コテコテで胃にもたれる系ばかりだったし。小説に慣れていないのは有る程度仕方ないとしても、登場人物が類型的かつ、関西弁のあくが強く、どうにも魅力的と言い難かった。極めつけはネタ。どうして究極の美味というと、猟奇な方向にしか行き着かないかな。B級ホラーじゃあるまいし。

と、いうわけで、買うんじゃなかった。早々に売り飛ばす事にします。
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2009年11月02日

『ふたつのスピカ』16巻完結 柳沼 行

4840129231ふたつのスピカ16 (MFコミックス フラッパーシリーズ)
メディアファクトリー 2009-10-23

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ついに完結。9年に渡る連載、本当にお疲れさまでした。
皆がそれぞれの夢を叶えて、単純な大団円!とならないところが、いかにもこの作品らしいところでした。本当に、ふと夜空を見上げたくなるような、切ない余韻の漂うラスト。この巻だけで何回泣いたことか(特に、佐野先生!)。何も言うことはありません。

青春ただ中の人にも、青春をはるかに過ぎた人にも、長く記憶されるべき「青春の傑作」と断言致します。NHKドラマは問題外として。ごく前期分しか制作されなかったアニメも、この機会にラストまで作ってくれないものでしょうか。そして、何より、できるだけ多くの人に、この物語を直に読んでいただきたいです。
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2009年11月01日

『乙嫁語り』1巻 森 薫

4047260762乙嫁語り 1巻 (BEAM COMIX)
エンターブレイン 2009-10-15

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『エマ』の森さんの新連載。今度は同じく19世紀の中央ユーラシアのお話です。
カスピ海沿岸の草原地帯。何代か前に定住した遊牧民のエイホン家。このたび、12歳の息子のカルルクの元へ、20歳の新妻アミルが嫁いできた。明るくて行動的なアミルと、初々しく誠実なカルルク少年の、仲むつまじい新婚生活が、、森さんならではの入念な描き込みで描き出されます。

後書きにもありましたが、森さんが、あのあたりの地域に対するあらゆる萌えをぶち込んだらしい物語。ひろびろとした風景と、こまごまとした民族的装飾の嵐。そしてほんわかした日常感。いつまでもそこに浸っていたい心地よさです。
しかし、物語的には、この結婚に対し、(当時の感覚で)若くない嫁にやや抵抗を示すエイホン家親族や、アミルの実家の利害が絡んで、不穏な先行きが暗示されています。

12歳と20歳といえば、たしか光源氏と藤壷の年回りに近いかも。源氏と若紫ほどメジャーではありませんが、少年と姉さん女房も、これでなかなかイイ!伝統ある萌えネタと申せましょう。くすぐったいような、ほほえましさがたまりません。じっくりと続きを待たせていただきます。
posted by 波多利郎 at 13:04| Comment(0) | TrackBack(0) | Comic | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年10月14日

『フリーター、家を買う。』 有川 浩

4344017226フリーター、家を買う。
幻冬舎 2009-08

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新卒で入社した会社を、3ヶ月で辞めた主人公の誠治は、そのまま次の就職も決まらないまま、2年近くを安易にフリーターのままで過ごしてしまう。その間に気が付くと、母が、長年の近隣からのイジメのストレスから、重度の鬱病と不安障害で日常生活もままならない状態になっていた。おまけに父は、そんな母を見ない振りして飲んだくれるだけの、救いようのない男であることが判明。名古屋に嫁ぎながら急遽里帰りした姉にどやされ、ようやくこの窮状に立ち向かう決心をした誠治だったが…。

有川さんに珍しく、主人公がかなりの底打ちダメ男からスタートし、成長していく話。とはいえ、結局彼も、悔い改めれば有能だったりするし、女性キャラが出れば、必然性無く恋愛話が突っ込まれたりするところは、やはり有川さんらしいというか。就職活動中の身としては、履歴書の話とか、耳の痛いところもありましたが、やはり全体的に話がで出来すぎかな、と思わざるを得ませんでした。

まあこの話、2007年7月〜12月の連載なので、その頃に2008年に始まったこの恐慌を予測しろというのは無理な話ですが。ただ、フリーターでも悔い改めさえすれば未経験、無資格で出直せる幸福な時代は、もうとっくに終わっています。今、フリーターであることを、本人の心がけのせいであるかのように言うのは、酷だということだけは言いたいです。
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2009年10月12日

『獣の奏者』探求編/完結編

4062156326獣の奏者 (3)探求編
講談社 2009-08-11

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4062156334獣の奏者 (4)完結編
講談社 2009-08-11

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「闘蛇編」「王獣編」を経て、一度は完結したエリンの物語でしたが、このたび続編として新たに、「探求編」「完結編」の2冊が刊行されました。果たしてこれを書くことが必用なのか、作者自身が迷いながら書いたという続編は、しかし、本編を数段上回る深みと迫真力でもって、生きる重さを問いかけていました。

「降臨の野」から11年後。結婚し、息子ジェシをもうけたエリンは、このまま親子3人でずっと平和に暮らしていけることを、心から祈っていた。しかし、隣国ラーザが国境に侵入し、王国が戦争の危機に直面したとき、エリンは再び王獣を飛ばすことを迫られる。

巨大な力と持つことと、平和を維持するという、ともすれば安易に現代になぞらえてしまえそうなテーマを扱いながら、それが通り一遍な空論に陥らないのは、力を持つのが「生ある物」であるから。
エリンは戦争自体は、人間の業としてあきらめているところがありますが、そのために獣を縛り、命あるものの有るべき姿を歪めることは、できる限り回避しようとしてきました。しかし、エリンや真王の個人的感情に関わりなく、国レベルで危機に直面したときに、そこにある巨大な力を利用しないわけにはいかないのも、また人の業。逡巡の果てにエリンは、忌避していた力を使うことの先に、起こる全てを見届けようとします。続く
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2009年10月11日

『儚い羊たちの祝宴』 米澤穂信

4103014725儚い羊たちの祝宴
新潮社 2008-11

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米澤さんの、昭和初期あたりを舞台にした、ミステリ短編集。いかにもな名門・資産家の一族に起こる、業としがらみにまみれた5編の事件。個々の事件は独立していますが、とある名門校の読書サークル「バベル会」に籍を置く子女達が関わっている、という点でつながっています。

ミステリーの胸のすく謎解き、というよりは、乱歩ばりの猟奇と不条理な雰囲気を味わうための1冊。なので、さすがに米澤さん的いつもの青臭さは控えめでした。とはいえ、必要以上にグロくすることもなく、この人らしい端正さで描かれていて、面白かったです。
「アミルスタン羊」の話は、オチは具体的に明らかにされないなりに察しがついてしまった。つい元ネタらしいスタンリイ・エリンの「特別料理」も読んでみたくなりました。
posted by 波多利郎 at 22:56| Comment(0) | TrackBack(0) | Novel | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年10月01日

『はむ・はたる』 西條奈加

4334926746はむ・はたる
光文社 2009-08-20

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『金春屋ゴメス』の西條さんの最新江戸人情もの。『烏金』で脇役だった孤児達が主人公として活躍する物語。って、ごめん、この子達のエピソードはごっそり忘れてしまってるわ。読み返しが必用かもだが、それはともかく。

「はむ・はたる」は、もちろん、ファム・ファタール。男を食い物にする魔性の女のこと。縁あって、旗本の御隠居様に身元引受人になってもらい、堅気の仕事で生計を立てようとがんばる孤児達だが、世間の風当たりは時に想像以上に厳しい。界隈で何か事件でも起きようものなら、即座に彼等へ疑いがかかったりする環境で、時に降りかかる火の粉を払うべく、足と知恵を駆使して事件の解決に乗り出したりもするのだった。
そんな時に諸国漫遊していた御隠居様の次男坊の柾が帰還する。柾は気さくで飄々とした人柄で、孤児達の事件解決に手を貸してくれたりもする好人物だったが、彼には長年仇として追っている相手がいた。

孤児達のひとりひとりの視点で描く、長屋界隈事件簿は、決して甘くはない話ながら爽やかな人情がいい感じでした。西條さん、やっぱりこういうの上手いです。

ただ、メインテーマの「はむ・はたる」については、やや、あっさりしていたというか。単なる悪女でない、女の哀しみを描きたかったと思うのですが、そこまで掘り下げられていなかったように思えます。少しもったいなかったかも。
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2009年09月16日

『わたしのお嬢様』変装紳士とお嬢様  樹るう 

4777807002わたしのお嬢様 変装紳士とお嬢様編 (タツミコミックス)
辰巳出版 2009-09-05

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作者曰く、なんちゃってヴィクトリアン・コメディ、第3弾。
実業家のマーチ家は、根っから破天荒な一家。8歳にして株を操る、末恐ろしいメリーベル(メリー)お嬢様。メリーには大甘だが、肝はどっしり据わりまくりの両親。メリーの子守メイドのミリー@ドジっ子。メリーの家庭教師のステア先生。前巻の「探偵ごっこのお嬢様」までは、このメンバーが繰り広げるいささかハードなホームコメディと、ミリーとステア先生とのお約束ラブコメが楽しみでした。

で、最新刊は、出奔していたミリーの兄、マーチ家の長男アーサーのお話です。4年前に14歳で出奔したと、話には出ていた彼がこっそり帰還。単なる無鉄砲野郎かと思いきや、彼の幼い頃のある事件が、能天気そのもののマーチ家に意外な影を投げかけていたことが明らかになります。そしてそれは、ミリーの生い立ちの話へとつながっていくようでした。

先がすごく楽しみなんですけど、コレ、どこで連載しているんでしょうか。続き、いつ出てくれるんでしょーか。
posted by 波多利郎 at 07:14| Comment(0) | TrackBack(0) | Comic | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年09月15日

『バルサの食卓』 上橋菜穂子/チーム北海道

4101302782バルサの食卓 (新潮文庫)
新潮社 2009-07-28

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書店で見かけてつい、買ってしまいました。いえ、あまりに美味しそうだったので。
これは上橋さんの描くところの、ファンタジー作品に登場する異世界の料理を、この世の食材を使って実現させてしまおうというコンセプトの、夢のようなお料理本です。

ちなみに、料理を担当されている方は、最近映画化されたエッセイ『面白南極料理人』の著者の西村淳氏。西村氏は南極越冬観測隊という、考えられる限りのハードな密閉環境で、食うことしか楽しみがないという状況の7人の男集団相手に、1年間飽きさせない料理を作り続けた方だとか。いや、そちらのエッセイもおもしろかったので、つい読破してしまいました。

文化人類学者でもある上橋さんは、世界各地にフィールドワークに出かけた経験もあってか、そのファンタジー世界にいかにも実在しそうな、温度や匂いさえ確かに想像できそうな料理と食事風景を描き出してきました。今回、各料理はレシピとともに、その作品中の食事描写付きで紹介されています。『獣の奏者』の「乳と蜂蜜につけたファコ」とか、『天と地の守り人』の「湯気のたつスチャル」とか、もうその文章だけで生唾もの。わああ、食いてえ!と叫んでしまうのであった。ちくしょー、いつか作ってやるう。おすすめです。
posted by 波多利郎 at 12:04| Comment(0) | TrackBack(0) | Novel | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする