2016年09月11日

『雲は湧き、光あふれて』/『エースナンバー』 須賀しのぶ

雲は湧き、光あふれて (集英社オレンジ文庫)
雲は湧き、光あふれて (集英社オレンジ文庫)須賀 しのぶ 河原 和音

集英社 2015-07-17
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エースナンバー 雲は湧き、光あふれて (集英社オレンジ文庫)エースナンバー 雲は湧き、光あふれて (集英社オレンジ文庫)須賀 しのぶ 河原 和音

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野球をこよなく愛する須賀さんの、高校野球をテーマにしたオムニバス短編集。続編の『エースナンバー』では、『雲は湧き〜』で登場したチームの前日譚やその後が読めて嬉しかったです。

某代打&代走コンビのその後も良かったし。また、幼なじみ同士で、強豪校と弱小公立校のチームに進学し、それぞれエースとして投げている2人が、お互いだけライバルとして意識し合っている話とか。なかなか萌える展開で好きだったのですが、やっぱり人気があったらしい。

この月谷君は、『おおきく振りかぶって』の三橋タイプの投手なのに、性格が阿部君なので、美味しいです。いつか彼らのその後の成長が見られると期待して良いですか?
posted by 波多利郎 at 18:04| Comment(0) | TrackBack(0) | Novel | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

『ホーンテッド・キャンパス』 櫛木理宇

ホーンテッド・キャンパス (角川ホラー文庫)
ホーンテッド・キャンパス (角川ホラー文庫)櫛木 理宇 ヤマウチ シズ

角川書店(角川グループパブリッシング) 2012-10-25
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最近ハマった人気シリーズ。北陸にある雪越大学の「オカルト研究会」が学内に蔓延する怪奇現象の謎を解き明かす。ライトな『ゴーストハント』シリーズといった雰囲気で気に入ってます。おそらく、作者もあのシリーズが好きで、リスペクトがあるのかと勝手に思うところでした。

主人公、八神森司は、少しばかり「視える」体質。とはいえ、お祓い系の力は皆無で、できれば怖いものには近寄りたくないと思っている。それが、「オカルト研究会」に入会してしまったのは、高校の後輩で、今年雪大の同級生になった(森司は一浪なので)灘こよみが、そこに入会したからだった。

オカルト研究会は、オカルト全般に異様に詳しい蘊蓄魔神の部長と、対人折衝と実務能力の突出した副部長。霊感があって体力勝負もできる上級生(3人とも3年生)。それに森司とこよみという2人の1年生で構成されています。彼らは口コミでオカルト関係の相談を受け付けているのですが、学校内の身内の紹介で持ち込まれる相談にしては、、結構ハードなものばかり。素人が扱うのはどう見てもやばいんじゃね、と思いつつ、なんだかんだで無事解決しているのでした。

まあ、8冊ともなると、オカルト事件も、主人公カップルのじれっっっっったいラブコメも、ややマンネリになるのは避けられないところですが、このオカルト研のメンバーが右往左往する事件簿は、いつでも気持ちよく見ていられるのでした。 オカルトネタに、いまだあるところにはある、家制度やムラ社会の因習や差別を取り上げているところも、リアリティがあっていい。今時の電脳系ツールや現代的無名の悪意ネタ、サイコパス系があまりないのも、後味が悪くなりすぎなくていいと思います。
そんなに怖くないんだし、メディアファクトリーあたりで出してもよかったんじゃないだろうか。
続く
posted by 波多利郎 at 16:45| Comment(0) | TrackBack(0) | Novel | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

『少年の名はジルベール』 竹宮惠子

少年の名はジルベール
少年の名はジルベール竹宮 惠子

小学館 2016-01-27
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竹宮さんが、漫画家生活40年を振り返った自伝的エッセイ。その赤裸々な想いが綴られたことで、話題になっていました。やっと読めました。

竹宮作品は『風と木の詩』があまりに衝撃的でしたが、私はむしろ、『変奏曲』『地球へ…』で生々しく描かれていた、選ばれし者の恍惚と不安、そして選ばれなかった者の嫉妬と足掻き続けるしかない敗北感こそを、強烈に覚えています。それらが負ける側にあってこそ、逆光に光り輝く物語であった事も。その感情はおそらく、彼女自身の生々しい体験に裏打ちされていたことでしょう。そして、竹宮さんの近くにあって、決して手の届かないまばゆい光のような存在と言えば、萩尾望都以外には考えられない事も、うすうす読者は察していたように思います。

もちろん、多くの人がいればその人なりの事象の見方があるもので、竹宮さんの語る過去はそのうちの一つにしか過ぎない訳ですが、それにしても、これはさぞかししんどかったろうなあ。同情せざるを得ない。

もちろん、萩尾さんがエッセイ等で語る彼女の過去においては、萩尾さんの作家生活も決して順風満帆という訳ではなく、今では信じられないほどに少女漫画への偏見や無理解の壁が厚かった時代、壁を突破しようと足掻いていたのは萩尾さんも同じだったはずでした。ただ、萩尾さんは最初から描きたいものをしっかり持って、評価されようとされまいと、愚直にそれを追求してきた印象がある。創作に邁進するあまり、周囲を慮っている余裕などないくらいに。端から見て、それこそが選ばれた証だったかもしれません。

1つの時代の黎明期に青春を過ごした人たちの、熱く、痛い風に吹かれたようでした。ちょっとうらやましい。
posted by 波多利郎 at 15:11| Comment(0) | TrackBack(0) | Novel | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年08月19日

「玉依姫」 阿部智里

玉依姫
玉依姫阿部 智里

文藝春秋 2016-07-21
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高校生の志帆は、5月の連休を利用して、祖母の故郷だという山内村に旅行に出かける。亡き母の兄だという伯父の誘いがあってのことだが、これまでほとんど交流がなかった家で、出迎えた村人総出の熱烈な歓迎。さすがに不信感を抱いた時はもう遅かった。

って、いまどき(といっても、1995年設定だが)、閉鎖された村でよそ者を祭りの生贄に、をマジでやりますか。そのまま唐櫃に押し込められて山神に奉げられてしまった志帆は、神の幼体らしきものの「母親」になるように告げられる。訳も分からず従う志帆だったが…。

この昔話的展開が、八咫烏の統べる「山内」の成り立ちに関わっているのは予告された通りです。ファンタジー的にはあまり釈然としないオチだったけど、ミステリー的には謎がすっきりした感じ。人間と神の側からの物語はそれで良かったのかもしれませんが、これ、八咫烏の側からはどうなのか。「山内」は
続く
posted by 波多利郎 at 18:51| Comment(0) | TrackBack(0) | Novel | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年08月14日

「あきない世傳 金と銀」2巻 田 郁

あきない世傳金と銀 2(早瀬篇) (ハルキ文庫 た 19-16 時代小説文庫)
あきない世傳金と銀 2(早瀬篇) (ハルキ文庫 た 19-16 時代小説文庫)高田 郁

角川春樹事務所 2016-08-09
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『みをつくし料理帖』シリーズの田さんが、今度はがっつり「商売」をテーマして描く新シリーズ、2巻目です。

江戸中期、農村で生まれた少女、幸は、生家の没落により、9歳にして大阪の呉服商に奉公に出される。その聡明さのみを武器に、商売と言う男世界に踏み出す彼女の、成長と、降りかかる苦難と、成功を描く細腕繁盛記。と、いう王道ストーリーを期待しております。ほんの序盤ではありますが。

質素倹約が唱えられ、景気が後退する時勢に、幸の奉公している五鈴屋も内情は厳しかった。そのうえ、四代目を襲名した跡取りが、商売に興味ない郭狂いの、性根の腐った阿保ぼん。あほぼんって、妙に語感が可愛いので、それほど酷く思えないのがアレですけど。そのあきれた行状に、よくできた人だったご寮さんも、堪えられず実家に帰ってしまった。

四代目に後添いは必要だが、これだけ悪名が広まってしまった男には、まともなお嬢さんとの縁組みは難しい、という事情で、下働きだった幸に後添えの白羽の矢が立ったのが1巻目まで。2巻ではまたあいかわらず、ぐいぐい引っ張ります。先が楽しみ。

まあ、このジェットコースター的展開の早さと、ダメージはあっても、決して致命的では無いレベルで、トータルには前進していけるところが田さんの話づくりの上手さです。だからこそ、少し主人公に甘いかな?というギリギリのさじ加減で、辛くなりすぎず、安心して読んでいられるのですが。
続く
posted by 波多利郎 at 11:57| Comment(0) | TrackBack(0) | Novel | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

「ダンジョン飯」3巻

ダンジョン飯 3巻 (ビームコミックス)
ダンジョン飯 3巻 (ビームコミックス)九井 諒子

KADOKAWA/エンターブレイン 2016-08-12
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かねてより、独特の味のあるファンタジー短編が注目されていた九井さんですが、本作で一気にメジャーなりました。新感覚wグルメマンガ。このたび、3巻が出ました。

RPG冒険者の主人公は、ダンジョン探索中に竜に喰われた妹を救出すべく、ダンジョンにとって返したものの、装備、特に食料を補給する時間が無かったことから、一行はダンジョン内で狩ったモンスターを調理して食べながらの、自給自足冒険を余儀なくされるが…。

アイデアもさることながら、モンスターの生態やその調理法がいちいち理にかなっていて、いかにもありそうに描写されています。「食材」がスライムやマンドレイクやコカトリス、歩く鎧といった、割合誰でも知っているモンスターでしかも、ちゃんと美味しそうなのが何とも言えません。3巻は大王イカもとい、クラーケン調理がリアルです。マルシルって意外に優秀、っていうか、これまでの使えない描写が気の毒。

しかし、当初の目的だった妹救出、まだ大丈夫なのでしょうか?
続く
posted by 波多利郎 at 09:53| Comment(0) | TrackBack(0) | Comic | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年08月06日

「重版出来」1〜7巻 松田奈緒子

重版出来! 1 (ビッグコミックス)
重版出来! 1 (ビッグコミックス)松田 奈緒子

小学館 2013-03-29
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マンガ出版界を舞台にした、熱血お仕事マンガ。そこにいつでも漫画があって、常に面白い新作が生み出され、いつでも続きが手に入る。この素晴らしき漫画パラダイスを、粉骨砕身して支える裏方的お仕事、編集者。その理想と現実をもろもろを織り交ぜて描きます。どれが夢で現実かは、多分企業秘密…。

女子柔道日本代表を目指しながら、故障で引退した主人公、黒沢心(小熊)。きっぱり切り替えた彼女は、昔から愛してきたマンガに関わる仕事を志し、出版社に入社。青年マンガの編集部で、熱血新人編集員として走り回る日々を送ります。そこで遭遇するマンガ界の現実。嫌みな同僚、あこがれの先輩、出版不況、いかに「売る」かの戦い。「おもしろいマンガ」とは?という終わりない問いかけ。いやー、1つ1つがリアルで、胸に迫ります。

誰も悪い人はいなくて、ただマンガに関わる立場は皆それぞれで、軋轢もある。ただそれでも、少しでも良いマンガが売れさえすれば、その全員が確実に幸せになれるのだと。正々堂々と夢を描く、近年まれなる元気の出るマンガです。

ドラマ版は、小熊も五百旗頭も安田も編集長も、あきれるほどぴったりで、大満足でした。願わくば、あの「伝説の少女漫画編集者」のエピソードも、ドラマで観てみたかった〜。

posted by 波多利郎 at 17:10| Comment(0) | TrackBack(0) | Comic | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

「真実の10メートル手前」 米澤穂信

これも、昨年からの感想アップ漏れに気づいたので、上げる事にします。せっかく本に肉筆サインもらったのに…。

真実の10メートル手前
真実の10メートル手前
米澤 穂信

東京創元社 2015-12-21
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『王とサーカス』に続く、大刀洗真知の事件簿。こちらは短編集です。フリーの記者となった大刀洗が、殺人、心中、災害現場といった、いわばワイドショー的な事件の取材に赴き、通俗的な思い込みに見過ごされがちな真実に肉薄します。

時に真実が人にもたらす痛み。『王とサーカス』ではまだ若く迷いもあった彼女は、ここではすっかり研ぎ澄まされ、刃のごとき怜悧さと、痛み引き受ける覚悟とを備えたかに見える。そんな彼女が立ち向かう、それぞれの真実とは?

ミステリーアンソロジー『街角で謎が待っている がまくら市事件』に収録されていた、「ナイフを失われた思い出の中に」がここにも収録されているのがうれしいです。大刀洗が高校時代の友人だったマーヤの兄に会う話。彼女を「センドー」と呼んでいた彼らは、今頃どうしているのかと、少しばかり気になったとしても。
posted by 波多利郎 at 15:56| Comment(0) | TrackBack(0) | Novel | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

「星読島に星は流れた」 久住四季

星読島に星は流れた (ミステリ・フロンティア)
星読島に星は流れた (ミステリ・フロンティア)久住 四季

東京創元社 2015-03-23
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印象的な書評を見かけたので、図書館リクエストしてみたのですが、おもしろかった。ミステリー的な仕掛けも、さわやかな読後感も。なかなかのアタリでした。

アメリカのNYからそう遠くない海上の孤島、セント・ジョーンズ島は、数年に一度、隕石が飛来する島として知られていた。島の持ち主の天文学者は、島に天文台を建ててそこで隠者のように暮らしていたが、年に一度隕石の落下を観測するオフ会を企画し、ネットで参加者を募っていた。
医者の加藤は、妻子を事故で喪って以来、無為に日々をただ生きていたが、たまたま応募したこの観測会に招かれ参加することになる。果たして、本当に星はやってくるのか?

面識のない者たちが孤島に集まり殺人、という王道設定ながら、話がリアルで無理がないし、星というロマンのある題材がうまく生かされていたと思います。このあとで、デビューシリーズの『トリックスターズ』が復刊されたのでそちらも追いかけてみました。いいタイミングだった。オススメ。
続く
posted by 波多利郎 at 15:41| Comment(0) | TrackBack(0) | Novel | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年07月17日

「消滅世界」村田沙耶香

消滅世界
消滅世界村田 沙耶香

河出書房新社 2015-12-16
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夫婦間のセックスが「近親相姦」としてタブー視され、子供の大部分が人工生殖で誕生するようになった世界の近未来ディストピア小説。
と、いうアオリ文句はセンセーショナルなので、ホラーを期待して読んでみたが、なんだこれ。

作中世界が現実と違うのはともかく、ここまでリアリティに乏しいと、突っ込みどころが多すぎて困る。そこで何の違和感も抱かず、淡々と生きていく主人公の目を通して、作者がこの世界をどう描きたいのか最後まで判然としなくて、もやもやする。読者にこれあかん、と思わせたいのか?それとも、意外とこういうのもアリ!と思わせたいのか。

唯一作者の血肉を帯びている感情が、主人公の母親への嫌悪と憎悪。基本何も感じない主人公が、こればかり突出して繰り返し毒を吐くので、いいかげん辟易しました。
続く
posted by 波多利郎 at 14:27| Comment(0) | TrackBack(0) | Novel | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする