2016年08月19日

「玉依姫」 阿部智里

玉依姫
玉依姫阿部 智里

文藝春秋 2016-07-21
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高校生の志帆は、5月の連休を利用して、祖母の故郷だという山内村に旅行に出かける。亡き母の兄だという伯父の誘いがあってのことだが、これまでほとんど交流がなかった家で、出迎えた村人総出の熱烈な歓迎。さすがに不信感を抱いた時はもう遅かった。

って、いまどき(といっても、1995年設定だが)、閉鎖された村でよそ者を祭りの生贄に、をマジでやりますか。そのまま唐櫃に押し込められて山神に奉げられてしまった志帆は、神の幼体らしきものの「母親」になるように告げられる。訳も分からず従う志帆だったが…。

この昔話的展開が、八咫烏の統べる「山内」の成り立ちに関わっているのは予告された通りです。ファンタジー的にはあまり釈然としないオチだったけど、ミステリー的には謎がすっきりした感じ。人間と神の側からの物語はそれで良かったのかもしれませんが、これ、八咫烏の側からはどうなのか。「山内」は
続く
posted by 波多利郎 at 18:51| Comment(0) | TrackBack(0) | Novel | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年08月14日

「あきない世傳 金と銀」2巻 田 郁

あきない世傳金と銀 2(早瀬篇) (ハルキ文庫 た 19-16 時代小説文庫)
あきない世傳金と銀 2(早瀬篇) (ハルキ文庫 た 19-16 時代小説文庫)高田 郁

角川春樹事務所 2016-08-09
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『みをつくし料理帖』シリーズの田さんが、今度はがっつり「商売」をテーマして描く新シリーズ、2巻目です。

江戸中期、農村で生まれた少女、幸は、生家の没落により、9歳にして大阪の呉服商に奉公に出される。その聡明さのみを武器に、商売と言う男世界に踏み出す彼女の、成長と、降りかかる苦難と、成功を描く細腕繁盛記。と、いう王道ストーリーを期待しております。ほんの序盤ではありますが。

質素倹約が唱えられ、景気が後退する時勢に、幸の奉公している五鈴屋も内情は厳しかった。そのうえ、四代目を襲名した跡取りが、商売に興味ない郭狂いの、性根の腐った阿保ぼん。あほぼんって、妙に語感が可愛いので、それほど酷く思えないのがアレですけど。そのあきれた行状に、よくできた人だったご寮さんも、堪えられず実家に帰ってしまった。

四代目に後添いは必要だが、これだけ悪名が広まってしまった男には、まともなお嬢さんとの縁組みは難しい、という事情で、下働きだった幸に後添えの白羽の矢が立ったのが1巻目まで。2巻ではまたあいかわらず、ぐいぐい引っ張ります。先が楽しみ。

まあ、このジェットコースター的展開の早さと、ダメージはあっても、決して致命的では無いレベルで、トータルには前進していけるところが田さんの話づくりの上手さです。だからこそ、少し主人公に甘いかな?というギリギリのさじ加減で、辛くなりすぎず、安心して読んでいられるのですが。
続く
posted by 波多利郎 at 11:57| Comment(0) | TrackBack(0) | Novel | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

「ダンジョン飯」3巻

ダンジョン飯 3巻 (ビームコミックス)
ダンジョン飯 3巻 (ビームコミックス)九井 諒子

KADOKAWA/エンターブレイン 2016-08-12
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かねてより、独特の味のあるファンタジー短編が注目されていた九井さんですが、本作で一気にメジャーなりました。新感覚wグルメマンガ。このたび、3巻が出ました。

RPG冒険者の主人公は、ダンジョン探索中に竜に喰われた妹を救出すべく、ダンジョンにとって返したものの、装備、特に食料を補給する時間が無かったことから、一行はダンジョン内で狩ったモンスターを調理して食べながらの、自給自足冒険を余儀なくされるが…。

アイデアもさることながら、モンスターの生態やその調理法がいちいち理にかなっていて、いかにもありそうに描写されています。「食材」がスライムやマンドレイクやコカトリス、歩く鎧といった、割合誰でも知っているモンスターでしかも、ちゃんと美味しそうなのが何とも言えません。3巻は大王イカもとい、クラーケン調理がリアルです。マルシルって意外に優秀、っていうか、これまでの使えない描写が気の毒。

しかし、当初の目的だった妹救出、まだ大丈夫なのでしょうか?
続く
posted by 波多利郎 at 09:53| Comment(0) | TrackBack(0) | Comic | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年08月06日

「重版出来」1〜7巻 松田奈緒子

重版出来! 1 (ビッグコミックス)
重版出来! 1 (ビッグコミックス)松田 奈緒子

小学館 2013-03-29
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マンガ出版界を舞台にした、熱血お仕事マンガ。そこにいつでも漫画があって、常に面白い新作が生み出され、いつでも続きが手に入る。この素晴らしき漫画パラダイスを、粉骨砕身して支える裏方的お仕事、編集者。その理想と現実をもろもろを織り交ぜて描きます。どれが夢で現実かは、多分企業秘密…。

女子柔道日本代表を目指しながら、故障で引退した主人公、黒沢心(小熊)。きっぱり切り替えた彼女は、昔から愛してきたマンガに関わる仕事を志し、出版社に入社。青年マンガの編集部で、熱血新人編集員として走り回る日々を送ります。そこで遭遇するマンガ界の現実。嫌みな同僚、あこがれの先輩、出版不況、いかに「売る」かの戦い。「おもしろいマンガ」とは?という終わりない問いかけ。いやー、1つ1つがリアルで、胸に迫ります。

誰も悪い人はいなくて、ただマンガに関わる立場は皆それぞれで、軋轢もある。ただそれでも、少しでも良いマンガが売れさえすれば、その全員が確実に幸せになれるのだと。正々堂々と夢を描く、近年まれなる元気の出るマンガです。

ドラマ版は、小熊も五百旗頭も安田も編集長も、あきれるほどぴったりで、大満足でした。願わくば、あの「伝説の少女漫画編集者」のエピソードも、ドラマで観てみたかった〜。

posted by 波多利郎 at 17:10| Comment(0) | TrackBack(0) | Comic | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

「真実の10メートル手前」 米澤穂信

これも、昨年からの感想アップ漏れに気づいたので、上げる事にします。せっかく本に肉筆サインもらったのに…。

真実の10メートル手前
真実の10メートル手前
米澤 穂信

東京創元社 2015-12-21
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『王とサーカス』に続く、大刀洗真知の事件簿。こちらは短編集です。フリーの記者となった大刀洗が、殺人、心中、災害現場といった、いわばワイドショー的な事件の取材に赴き、通俗的な思い込みに見過ごされがちな真実に肉薄します。

時に真実が人にもたらす痛み。『王とサーカス』ではまだ若く迷いもあった彼女は、ここではすっかり研ぎ澄まされ、刃のごとき怜悧さと、痛み引き受ける覚悟とを備えたかに見える。そんな彼女が立ち向かう、それぞれの真実とは?

ミステリーアンソロジー『街角で謎が待っている がまくら市事件』に収録されていた、「ナイフを失われた思い出の中に」がここにも収録されているのがうれしいです。大刀洗が高校時代の友人だったマーヤの兄に会う話。彼女を「センドー」と呼んでいた彼らは、今頃どうしているのかと、少しばかり気になったとしても。
posted by 波多利郎 at 15:56| Comment(0) | TrackBack(0) | Novel | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

「星読島に星は流れた」 久住四季

星読島に星は流れた (ミステリ・フロンティア)
星読島に星は流れた (ミステリ・フロンティア)久住 四季

東京創元社 2015-03-23
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印象的な書評を見かけたので、図書館リクエストしてみたのですが、おもしろかった。ミステリー的な仕掛けも、さわやかな読後感も。なかなかのアタリでした。

アメリカのNYからそう遠くない海上の孤島、セント・ジョーンズ島は、数年に一度、隕石が飛来する島として知られていた。島の持ち主の天文学者は、島に天文台を建ててそこで隠者のように暮らしていたが、年に一度隕石の落下を観測するオフ会を企画し、ネットで参加者を募っていた。
医者の加藤は、妻子を事故で喪って以来、無為に日々をただ生きていたが、たまたま応募したこの観測会に招かれ参加することになる。果たして、本当に星はやってくるのか?

面識のない者たちが孤島に集まり殺人、という王道設定ながら、話がリアルで無理がないし、星というロマンのある題材がうまく生かされていたと思います。このあとで、デビューシリーズの『トリックスターズ』が復刊されたのでそちらも追いかけてみました。いいタイミングだった。オススメ。
続く
posted by 波多利郎 at 15:41| Comment(0) | TrackBack(0) | Novel | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年07月17日

「消滅世界」村田沙耶香

消滅世界
消滅世界村田 沙耶香

河出書房新社 2015-12-16
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夫婦間のセックスが「近親相姦」としてタブー視され、子供の大部分が人工生殖で誕生するようになった世界の近未来ディストピア小説。
と、いうアオリ文句はセンセーショナルなので、ホラーを期待して読んでみたが、なんだこれ。

作中世界が現実と違うのはともかく、ここまでリアリティに乏しいと、突っ込みどころが多すぎて困る。そこで何の違和感も抱かず、淡々と生きていく主人公の目を通して、作者がこの世界をどう描きたいのか最後まで判然としなくて、もやもやする。読者にこれあかん、と思わせたいのか?それとも、意外とこういうのもアリ!と思わせたいのか。

唯一作者の血肉を帯びている感情が、主人公の母親への嫌悪と憎悪。基本何も感じない主人公が、こればかり突出して繰り返し毒を吐くので、いいかげん辟易しました。
続く
posted by 波多利郎 at 14:27| Comment(0) | TrackBack(0) | Novel | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年07月14日

「蜘蛛の巣を払う女」上下 ダヴィド・ラーゲルクランツ 

4152095849ミレニアム 4 蜘蛛の巣を払う女 (上)
ダヴィド ラーゲルクランツ スティーグ ラーソン
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4152095857ミレニアム 4 蜘蛛の巣を払う女 (下)
ダヴィド ラーゲルクランツ スティーグ ラーソン
早川書房 2015-12-18

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スウェーデンミステリブームの先駆けとなった人気シリーズ『ミレニアム』。これまでに、スティーグ・ラーソンにより、『ドラゴン・タトゥーの女』 『火と戯れる女』 『眠れる女と狂卓の騎士』 の3册が刊行されてきました。しかし残念にもラーソンが急死したことで、未完のままになるはずだった本作、このたび、新たな執筆者に引き継がれての続編が発行されました。半信半疑でおそるおそる読んでみたところ…。

んー、確かに悪くは無い。文体は勢いがあって、むしろ読みやすくなった。社会派指向のあった前作から、よりエンタメに振り切った印象で、ハリウッド映画には、こちらの方が向いているかもです。

さて、かつて、社会派雑誌として、世に正義を知らしめた栄光ある「ミレニアム」編集部。今やネット社会にも乗り遅れ、経営難に直面する、見る影もないありさまでいた。ジャーナリストのミハエルは、すっかりくたびれた中年が板についていたが、ひょんなことから、リスペットの噂を耳にする。スウェーデンの某情報局にハッキングをしかけたとやらの、彼女の武勇伝をたどるミハエルは、ある高名な物理学者とその息子に降りかかる、国家的陰謀にワケも分からず巻き込まれていく。

今回はこれまで名前だけだったある重要な人物が登場します。この先、第10部までの構想があるそうなので、今回は彼らの顔見せを兼ねた序章といったところでしょう。リスペットは、ほとんどラノベ主人公並みに強くなっていますが、敵も相応に強大のよう。お手並み拝見致しましょう。


posted by 波多利郎 at 00:28| Comment(0) | TrackBack(0) | Comic | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年07月11日

「吸血鬼すぐ死ぬ」1〜3巻 盆ノ木至

吸血鬼すぐ死ぬ 3 (少年チャンピオン・コミックス)
吸血鬼すぐ死ぬ 3 (少年チャンピオン・コミックス)盆ノ木至

秋田書店 2016-07-08
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1巻の発売された頃から、私の周囲で何かと話題になっていた、吸血鬼ギャグマンガ。このたび3巻が出たばかりです。好きだわあ、このほのぼのボケ突っ込み。

主人公ロナルドは正義のヴァンパイアハンターで、今日も世の人々を守るために、凶悪吸血鬼に戦いを挑む(大ウソ)。実は彼は自らの活躍を小説に書く、執筆業の方が本業になりつつあり、戦う相手はもっぱら人類最強の男、出版社の編集さんであったりする。

一方、なりゆきで彼とコンビを組んでいる吸血鬼ドラルクは、吸血鬼としての力はめちゃ弱く、ほんのささいなショックで、コロコロ死んで灰になる(その後自然に復活)ヘタレ最弱吸血鬼。この2人が繰り広げるコメディワールドが、実に楽しい。

何しろ登場人物のほとんどが愛すべきヘタレ。特筆すべきは、ドラルクの使い魔(ペット)のアルマジロのジョン。ジョン、可愛いよ、ジョン。グッズ作りましょうよ、ぬいぐるみとか、Lineスタンプとか>秋田書店さん。

posted by 波多利郎 at 23:43| Comment(0) | TrackBack(0) | Comic | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年07月10日

「ハケンアニメ!」 辻村深月

ハケンアニメ!
ハケンアニメ!辻村 深月 CLAMP

マガジンハウス 2014-08-22
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アニメ業界を舞台に、プロデューサー、監督、原画というそれぞれの現場で活躍する女性達をオムニバス形式で描く、サブカル的お仕事小説。2014年刊行ですが、発表は2012年〜。おかげで作中に登場するアニメ作品のモデルも何となく分かってしまう。また、巻末に取材されたアニメ関係者の一覧が載っているのですが、知った名前もあってにやりとさせられる。なかなか楽しかったです。

彼女たちの、夢を追い、アニメが好きという情熱に支えられ、時に挫折や困難にぶち当たって折れそうになりながらも、前向きに進む姿に胸が熱くなります。ただ、基本的に悪い人のいない世界だったので、さすがに端から見ても、現実はこんなもんじゃないだろう感が漂ってしまうのは、仕方ないのでしょうか。
『SHIROBAKO』や『重版出来』が、人間のダメダメな部分も描いていて、リアリティがあると評価されながらも、現実は更に過酷と言われてしまうだけに。あと、ラブ設定はちょっと盛り込みすぎ…
posted by 波多利郎 at 15:13| Comment(0) | TrackBack(0) | Novel | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする