2017年01月09日

『いまさら翼といわれても』 米澤穂信

いまさら翼といわれても
いまさら翼といわれても米澤 穂信

KADOKAWA 2016-11-30
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米澤さん、古典部シリーズ最新作。単行本は6年ぶりでしょうか。たまに、読み切りが野性時代に掲載されますが、掲載誌はWebでも発売日に瞬殺売り切れに。人気のほどを思い知らされます。

さて、今回は中短編集。ある夜、ホータローが里志に呼び出され相談を受ける「箱の中の欠落」、摩耶花が中学時代のホータロー絡みの事件の記憶をたどる「鏡には映らない」、このエピソードのみアニメ化済み「連峰は晴れているか」、摩耶花の漫研ゴタゴタが決着する「わたしたちの伝説の一冊」、ホータローの痛い過去「長い休日」、そして表題作「いまさら翼といわれても」。

いやーやっぱり好きだ、このほろ甘酸っぱくも恥ずかしいせーしゅん。摩耶花さんエピソードなど、小さい世界にいると、どんなにばかばかしいことでも、身動きとれなくなってしまうとか、まさにサークルあるある。ただ、今回は過去話も多いので、正直途中まで、えるたん分が足りなかった。そして締めの「いまさら翼〜」で、いなくなったえると、全力で探し回るホータローという、やっと2人のこれからを方向付ける話が来たかと思いきや…!

続く
posted by 波多利郎 at 13:06| Comment(0) | TrackBack(0) | Novel | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

『自生の夢』 飛 浩隆

自生の夢
自生の夢飛浩隆

河出書房新社 2016-11-29
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現役の作家にして、私が最も純度の高いSFの描き手と信じる飛さん。寡作なこの人による10年ぶりの新作短編集。2002年以降の作品というくくりで、発表年も作風もかなり幅のある7編の短編が収録されています。

巻頭の『海の指』は『象られた力』『グラン・ヴァカンス』を彷彿させる、耽美にして残酷、そして怒涛のごとき映像美。それが『#銀の匙』以降は、「ことば」をそのものテーマとした、とある共通した世界のシリーズになっていきます。むきだしのことばとイメージの連なり。残酷さは影を潜めて、美しく、そして非常に難解に、際限なく錯綜していく螺旋。ストーリーは、すみません、後半に行くほど理解不能でしたが、SFを浴びる、体験する、というのに近い読後感でした。さすがに、読むのに時間かかったこと。
posted by 波多利郎 at 11:09| Comment(0) | TrackBack(0) | Novel | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

『人魚の眠る家』 東野圭吾 

人魚の眠る家
人魚の眠る家東野 圭吾

幻冬舎 2015-11-18
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プールの水難事故で植物状態になってしまった少女。延命措置か、臓器提供を前提とした脳死判定か。彼女の両親は深く苦悩する。意識も脳波も見られない状態ながら、医療の最先端技術によって、自力に近い呼吸をし、電気的刺激によって手足を動かす。ただ眠っているようにしか見えない状態のまま、彼女は生き続ける。これは、科学の恩恵か?それとも、罪深い何かなのか?

いやーこれは少なくともミステリーではなさそうです。科学と倫理を問い詰める人間ドラマ。犯罪も争いも無い、がなんとも業が深い。堂々巡りなシチュエーションに絡め取られたまま、これをどういう結末に落とすのか皆目見当がつかないまま読み進めました。結末は、さすが東野さんだったなあ。
posted by 波多利郎 at 10:45| Comment(0) | TrackBack(0) | Novel | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年01月03日

2016年総括&2017年初のごあいさつ

2017年 明けましておめでとうございます。
いろいろありました2016年、どうぞ、いつかこの年が何かの転換点だったと思い起こすことがありませんように。
近い将来に軌道修正がかないますように。
声を上げ足を運び、Noと言い続けるしかありません。覚悟せねば。

さて、オタクな2016年総括です。

マンガ部門べスト
『僕だけがいない街』 三部けい
『重版出来!』 松田奈緒子
『この世界の片隅に』 こうの史代

アニメ化、実写化で知った作品が多いのはちょっとくやしいです。
『ポーの一族』の新作など、話題になりましたが、作品の評価としては完結するまで保留なり。
他にも年に一冊ペースの名作とか、話題にしづらいものの、楽しませてもらってますから〜。

小説部門べスト
『また、桜の国で』 須賀しのぶ
『トリックスターズ』 加住四季
『テスタメントシュピーゲル』3部の上 冲方丁

せっかく古典部の新作を買ってあるのに、図書館本を優先していてまだ読んでいないんだよう。ああ、3ヶ日が終わってしまう。

『テスタメントシュピーゲル』は、1部〜2部間が5年かかっていて、2部が1部と同じ時系列の別視点語りという、某十二国的な形式であったため、今回で7年越しの1部の先展開となります。内容は、ワンピースのごときバトルに次ぐバトル。冲方さん、獄中日記なんかいいから、早く下巻を。ラストスパートだ。

映像部門賞
『ユーリ!!!オンアイス』
『ゲームオブスローンズ 冬の狂風』
『シン・ゴジラ』
『君の名は』
『この世界の片隅に』

『ユーリ!!!オンアイス』は、いやー年末にとんだ伏兵に遭いました。1クールのアニメに半端なくハマったあげく、見苦しいほどのロス状態に陥り、本編とサントラとネット検索のヘビロテで年末年始が終わりつつあります。恐るべし。2期期待してます。いつまでも待ちます。

『ゲームオブスローンズ 冬の狂風』は、原作小説『氷と炎の歌』シリーズの刊行に先行して、ドラマが制作されました。先の読めないままに観たのは初めて。やっぱりすげえ。まあ、マーティン先生もお年で、いつまで書いてくれるか正直不安なこともあり。原作の刊行を待つより、原案を元にドラマ化してもらう方が、結局早くて確実なんだよなあ。来期、よろしくです。
無理とは思いつつNHK実写ファンタジーも、これくらい金かけてくれないものでしょうか。

『シン・ゴジラ』『君の名は』『この世界の片隅に』 アニメが大注目された記念すべき年。クールジャパンとかいう天下り組織とすっぱり縁を切ったところで、日本のアニメがちゃんと世界で評価され、まっとうに金を稼げる分野に成長できますように。才能あるクリエーターが好きな分野で食べていけますように。

posted by 波多利郎 at 12:15| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年11月27日

『夢見る葦笛』 上田早夕里

夢みる葦笛
夢みる葦笛
上田 早夕里

光文社 2016-09-15
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上田さんのSF短編集。上田さんもこのところ、熱量のあるドラマで読ませる長編が多くなってきましたが、今回は、ハードで映像的な、切れ味のあるSFという本領発揮。耽美、とまでは行かないものの、この現実から高らかに飛翔していく世界の映像美は、飛浩隆作品を彷彿させました。おもしろかった。
続く
posted by 波多利郎 at 15:20| Comment(0) | TrackBack(0) | Novel | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

『羊と鋼の森』 宮下奈都

羊と鋼の森
羊と鋼の森宮下 奈都

文藝春秋 2015-09-11
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2016年本屋大賞受賞作。ピアノの調律をテーマに、深く豊かに澄み切った「音」の世界を描いた、なんともいえず美しい物語。ピアノは、鋼の弦を、羊毛のフェルトが取り付けられたハンマーで叩くことで音を出す。調律師を目指して、その鋼と羊の森に足を踏み入れた主人公の苦闘を描きます。

ピアノは演奏する人が主で、調律師は、あくまでもそれを支える裏方的なイメージがあったのですが、ここでは調律師も立派な音の探求者として描かれます。言葉にできない、明確に伝えることの叶わない、音のイメージを楽器で再現する。その音を求める人がいて、それが仕事として成り立っているというのが、なんとも尊いことに思えてきます。
posted by 波多利郎 at 14:31| Comment(0) | TrackBack(0) | Novel | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

『また、桜の国で』須賀しのぶ 

また、桜の国で
また、桜の国で須賀 しのぶ

祥伝社 2016-10-12
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須賀さんの描く第二次世界大戦。これまでも繰り返し、この題材を取り上げて来た須賀さんながら、よりにもよって今回はポーランドが舞台。これまで以上に悲惨かつ、ハードなサバイバルで、ずっしり重かったです。

亡命ロシア人の父と日本人の母との間に生まれた棚倉慎。父親似の容貌が周囲から浮かないこともあって、外交官となり、世界の各地へ赴任してきた。1938年秋、満州のハルピンから、美しき平原の国ポーランドに転任した慎。ポーランドには、慎が幼い頃に、特別な感情をかき立てる1つの出会いがあった。

さて当時、ヨーロッパはうす紙一枚の平和を保っていたが、それが破られるのも時間の問題であった。周囲に露骨な野心を振りまくドイツとナチがいよいよ牙を剥いたとき、それを止められる者は存在しなかったから。とにかく、圧倒的に「世界が悪い方向に向かっている」という感覚。分かっていても抗えないという無力感。それは2016年11月の現在に、何とシンクロすることか。おかげでつらくて、なかなか読み進められなかったです。

ドイツの同盟国の日本人であることから、慎自身は闇に葬られることこそ無いものの、ポーランドと、慎の大切な人たちは見るも無残に踏みにじられていく。どう足掻いても、傍観しているしかない慎。ナチの行った残虐行為の、ほとんどがこの国で、最も大規模に行われた。第二次世界大戦が終結した後でさえ、「ソ連側」に組み込まれ、長い長い苦難に遭い続けた。それでいて、今回は、「神」すら想定されない物語。酷いことも救いもすべて、人間がこの手でやらかしたことなのだった。

「国を愛する心は上から植えつけられるものでは断じてない。まして、他国や他の民族への憎悪を糧に培われるものではあってはならない」須賀さんの魂の叫び。自由を、平和を、差別の無い世界を。声なき悲痛な叫びを、もしかしたら私たちはもう、声に出せなくはなっていないか。かつてきたあの道は、この先にもぽっかり開けてはいないか。まだ引き返せることを、願ってやみません。
posted by 波多利郎 at 13:30| Comment(0) | TrackBack(0) | Novel | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年10月16日

『戦場のコックたち』深緑 野分

戦場のコックたち
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東京創元社 2015-08-29
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2016年本屋大賞ノミネート作。と、いうことで、ほとんど予備知識無く、手にした本作。「コックたち」というくらいだから、少しはグルメ要素もあるのか?くらいに思ってたのですが、そっちはそれほどでもないです。「戦争」は第二次世界大戦。アメリカから志願兵として、ドイツ占領下のヨーロッパに上陸した主人公のティム。食べるのが好きで、祖母の影響で料理も多少はできたことから、調理も担当する「特技兵」を希望するのだったが…。

コックと言っても、アメリカの軍隊はちゃんと弁当風の「糧食」が配給されるので、主人公はスープくらいしか作っていない感じです。なので、どちらかというと、戦争という世界を巻き込む大嵐の渦中で、それでも営まれる人々の日常の片隅で、彼が遭遇するささやかな事件と謎がメインの物語。本当に人はばたばた死んでいくし、悲惨なことも理不尽も山ほどある中で、例えば降下に使ったパラシュートの予備をかき集めて民間人に横流しする兵がいたとして、そいつはパラシュートなんかを、何に使うのか?といった具合に。

まあ、謎解きもそれほど上手いオチではなかったです。ここで描かれたアメリカから見た第二次世界大戦。基本、飢えとか絶望はそれほどでもなくて、まだしも友情や人間性が発揮できる場面もあった。つまり、そういうドラマを描きたかったのかなあ。日本が関わった地域での、幽鬼のように絶望と玉砕に突き進んでいったアレでは無く。
posted by 波多利郎 at 15:37| Comment(0) | TrackBack(0) | Novel | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

『逃げるは恥だが役に立つ』1〜8巻 海野つなみ

逃げるは恥だが役に立つ(1) (Kissコミックス)
逃げるは恥だが役に立つ(1) (Kissコミックス)海野つなみ

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とむ影さんおすすめ。ただ今最新の8巻が出たばかり。ドラマ放送が始まったこともあり、トライしてみました。今時の若い女性の仕事、恋愛、結婚という、トレンディドラマが手垢をつけまくってきた直球ど真ん中なネタを、今という時代の最前線で展開するとこうなる、という、どこか社会学レポートを思わせるマンガでした。良くも悪くも理屈っぽい。
ドラマはどうなるでしょう。テーマ自体は本当に王道なので、甘ったるい恋愛ドラマにもできますが、願わくば原作の、普通口に出さない正論をしっかり言語化している、トンがった部分を、うまく前面に出していただきたい。お手並み拝見です。

主人公森山みくりは、大学院新卒採用で就職できず、やむを得ず不安定な派遣社員暮らし。今は週1で独身イケメン30台後半童貞男の家に家事代行に通っていた。当然、自活できるほどの収入も無いところで、両親が実家を処分して田舎暮らしすることになり、進退に迷う。ダメ元で、通い先のイケメンに、住み込みで家事を担当する契約結婚を持ちかけるが…。

まあ、この提案にイケメンが乗る時点で、お互い好意と信頼があったのだと思う。なので、以後の展開は契約という建前に阻まれて本音を言えないカップルのラブストーリーのつもりで読んできました。なんとも、まだるっこしかったが。

テーマは結婚てなんだろう?という本当に根源的な問いかけ。これも当然ながら、真面目に考えるほどに一生納得できる答えは出ないシロモノであったりします。とりあえず、この2人のように、経済的、世間体的なメリットがあれば、まだいい。が、今時はそれすら無い場合も多い気がします。
特に子供関連は、その時間的、経済的なコストの膨大さに誰もが尻込みせざるを得ない。愛情だのやりがいだの絆だのの、目に見えないメリットで、果たしていつまで次の世代を維持していけるのか。どうしよう、絶望しか感じね−んだけど…。

続く
posted by 波多利郎 at 15:29| Comment(0) | TrackBack(0) | Comic | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年09月11日

『雲は湧き、光あふれて』/『エースナンバー』 須賀しのぶ

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野球をこよなく愛する須賀さんの、高校野球をテーマにしたオムニバス短編集。続編の『エースナンバー』では、『雲は湧き〜』で登場したチームの前日譚やその後が読めて嬉しかったです。

某代打&代走コンビのその後も良かったし。また、幼なじみ同士で、強豪校と弱小公立校のチームに進学し、それぞれエースとして投げている2人が、お互いだけライバルとして意識し合っている話とか。なかなか萌える展開で好きだったのですが、やっぱり人気があったらしい。

この月谷君は、『おおきく振りかぶって』の三橋タイプの投手なのに、性格が阿部君なので、美味しいです。いつか彼らのその後の成長が見られると期待して良いですか?
posted by 波多利郎 at 18:04| Comment(0) | TrackBack(0) | Novel | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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