2006年06月22日

『となり町戦争』 三崎亜記

4087747409となり町戦争
三崎 亜記
集英社 2004-12

by G-Tools

↓「廃用身」に続けて読むと、我ながらマゾみたいな取り合わせ。これも、相当に苦いインパクトがありました。

ある日、主人公の町のお役所の広報で通知された、「となり町との戦争のお知らせ」。何かの誤りでも、冗談でもなく、本当に通知された日を境に、「となり町戦争」は開始された。事態がのみこめない主人公をよそに、広報で淡々と発表され続ける戦果、損害、戦死者。部外者であった主人公のもとにも、戦争への協力要請が舞い込む…。

どうにもナンセンスな設定でありながら、いかにしてこの日常の延長に、戦争をありえそうに描くかにこだわり抜いたリアリティには、やられたと思うしかありませんでした。しっかりと町の行政の中に組み込まれた「戦争事業」。何年もかけて計画され、周到に準備され、予算に計上された戦争は、開始された時には既に、現場のお役人が事務的に遂行していく公共事業の1つに過ぎなくなっていた。

戦後民主主義の中で育った主人公の中にある「戦争はイケナイ」という素朴なお題目は、それを遂行していく行政の着実さ、迷いなさに対して、少しもとっかかりを見いだせないまま沈黙させられる。いかにも「普通の人」である主人公が読者と等身大に配置されたことで、読者もまた高見の見物が許されない気になってしまう隙の無さ。脱帽でした。
posted by 波多利郎 at 00:31| Comment(0) | TrackBack(0) | Novel | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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