![]() | となり町戦争 三崎 亜記 集英社 2004-12 by G-Tools |
↓「廃用身」に続けて読むと、我ながらマゾみたいな取り合わせ。これも、相当に苦いインパクトがありました。
ある日、主人公の町のお役所の広報で通知された、「となり町との戦争のお知らせ」。何かの誤りでも、冗談でもなく、本当に通知された日を境に、「となり町戦争」は開始された。事態がのみこめない主人公をよそに、広報で淡々と発表され続ける戦果、損害、戦死者。部外者であった主人公のもとにも、戦争への協力要請が舞い込む…。
どうにもナンセンスな設定でありながら、いかにしてこの日常の延長に、戦争をありえそうに描くかにこだわり抜いたリアリティには、やられたと思うしかありませんでした。しっかりと町の行政の中に組み込まれた「戦争事業」。何年もかけて計画され、周到に準備され、予算に計上された戦争は、開始された時には既に、現場のお役人が事務的に遂行していく公共事業の1つに過ぎなくなっていた。
戦後民主主義の中で育った主人公の中にある「戦争はイケナイ」という素朴なお題目は、それを遂行していく行政の着実さ、迷いなさに対して、少しもとっかかりを見いだせないまま沈黙させられる。いかにも「普通の人」である主人公が読者と等身大に配置されたことで、読者もまた高見の見物が許されない気になってしまう隙の無さ。脱帽でした。


